屋根の実戦データ

  • 執筆者略歴
  • 沼太英雄士(沼田 弘)
  • 1961年 岩手県遠野市生れ
  • 早稲田大学 教育学部 理学科
    生物学専修卒業
  • 2級建築士
  • 2010年現在
    (有)沼田製瓦工場 代表取締役

実戦!屋根の知識(瓦工事に使用するその他の材料)

 瓦屋根であっても、瓦のみで屋根を完成させることは出来ません。具体的には、下葺き材や瓦を引っ掛ける桟木、緊結材としての釘、ビス等多くの材料を使用します。これらを総称して「副資材」と呼びます。ちなみに瓦など屋根材は「本資材」と呼ばれます。
 「副資材」を施工工程の順に列記してみます。

 この項では、1578101112 について解説いたします。その他については本ホームページの「施工マニュアリング」「施工図(CADデータ)」をご参照ください。

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1.下葺き材(ルーフィング)

 屋根工事の第1工程は、出来上がった屋根面に下葺き材という防水紙を貼る工事です。これは瓦に限らず一般的に全ての屋根工事に共通します。屋根材は1次防水層であり、そこを通過した浸水を2次防水層である下葺き材で受けるのです。また、1次防水層である屋根材の裏面に発生する結露水を受ける為にも重要です。ルーフィングとも呼びます。以下、瓦工事に主に使用されるルーフィングをご紹介します。

(1) アスファルトルーフィング22kg・23kg(JIS規格940適合品)
基材にアスファルトを浸透、さらにアスファルト被膜し、鉱物質粉末を裏表に付着させたもの。 1巻の長さは21m、幅1m。JIS規格があり、数値の940は単位面積質量。22kg、23kgは1巻の重さ。23kgは22kgの表面に緑の塗装を施したもの(1kgの差は塗料の重さの差)。
(2) 改質アスファルトルーフィング
通称ゴムアス。アスファルトルーフィングの中にゴムを混入させ釘穴シール性(釘穴の締り)を高めたもの。JIS規格がなく、商品によって製法、品質、価格のバラツキが激しい。
(3) 粘着層付き改質アスファルトルーフィング
ゴムアスの裏面を粘着層とし、屋根板に接着させて施工する。屋根板に密着することにより釘穴シール性がいっそう高まる。また2次的な効果として、ステープルを使わずに施工出来る=表面にステープルの穴を開けずに済む=防水性向上、となるメリットも大きい。
(4) 合成樹脂系シート
極めて破れにくいと言う特徴がある反面、釘穴シール性は劣る。但し、オルフィン系と呼ばれる樹脂製品が比較的釘穴シール性は良好とされている。
(5) 透湿性ルーフィング
比較的新しいルーフィング材。表面は防水性を持ちながら、裏面から表面へ湿気を通過させる(逃がす)機能がある。

 瓦業界では、ここ数年でアスファルトルーフィングから改質アスファルトルーフィングへと大きくシフトしています。当社でも、2003年より改質アスファルトルーフィングを全工事標準仕様としました。理由は、瓦の釘止め本数が全数止めかそれに近い形になり、以前よりもルーフィングに釘穴を開けざるを得なくなったからです(瓦を全部釘止めすることについてはまだまだ検討を要すると思います。この点については別の項で再度触れたいと思います)。
 但し、改質アスファルトルーフィングは、決まった規格がなく、品質、価格のバラツキが大きいです。当社では、シール性について数種類をサンプルに社内実験を行い、価格と品質のバランスがもっとも良いと判断した製品を使用してます。
 合成樹脂系シートは、現在、当社ではあまり使用しておりません。やはり釘穴シール性に納得いかないものがありました。ある製品に釘を刺したまま曝露試験(屋外に放置する試験)をしてみたのですが、しばらくしてかなりの収縮が認められました。釘穴を締める向きではなく開く向きに収縮してゆくようです。どうしても破れにくいルーフィングを使用しなければならないなど特殊な事情がある場合、当社ではオレフィン系の製品を使用してます。
 透湿性ルーフィングを使用する目的は、小屋裏結露の防止にあります。小屋裏の暖まった空気が屋根板の隙間から透湿性ルーフィングを通して外へ抜ければ、小屋裏では結露が発生し難くなります。しかし、抜けた空気は一旦透湿性ルーフィングと屋根材の間に留まりますから、今度は屋根材の裏側で結露が発生する可能性が高まります。したがって、瓦工事に使用する場合は、必ず桟木を腐食しない材質(出来れば樹脂材)にしなければいけません。このような条件化では瓦は腐りませんが木材はすぐに腐食してしまいます。さらに、発生した結露水がきちんと外部へ抜け出るような施工を行うことが肝心です。
瓦だけでなく、どんな屋根材の場合も透湿性ルーフィングを使用する場合はこの点で注意が必要です。
 ルーフィングに限らず、新しい機能を持った材料を使用する場合、プラスの面だけではなくそれによって新たに引き起こされるマイナス面がないか、よく考えることがとても大切だと思います。現代の建築は、互いに完全とは言えない材料・工法をいかにその欠点を補い合う形に組み合わせるかというバランスの上に成り立っている気がします。新建材を導入するということは、そこにそれまでのバランスを崩す要素を入れることです。我々専門工事業者も、常に建築の整合性ということを念頭に置き、工事に取り組むことが必要です。

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5.瓦桟木(横桟木)

 瓦の古来からの施工法は土葺きでした。屋根の上に葺き土を置き、瓦をそこに馴染ませるようにのせていく葺き方です。当然重量は重くなりますが、当時の瓦は今と違って多かれ少なかれ形がねじれているのが普通でした。その瓦を組み合わせて葺いてゆくのですから葺き土で調整を取らねばならなかったのだと思います。西日本では現在でも土葺き工法が行われています。阪神淡路大震災の被害も、土葺き工法が多かったことがその一因とされています。
 一方、東日本はほとんど引っ掛け桟工法です。関東では、関東大震災後、一気に引っ掛け桟工法が普及しました。建築の世界は「湿式から乾式へ」の流れにありますが、この工法の変遷もその流れの一部と言えるかもしれません。
 引っ掛け桟工法は葺き土を用いず、屋根に桟木という横棒を打ってそこに瓦を引っ掛けて置き、釘止めします。使用される桟木の種類は以下の通りです。

  • (1) 木材(杉が多い)
  • (2) 防腐処理木材
  • (3) 樹脂材
  • (4) 金属製(アルミ)

 瓦屋根の耐久性(瓦自体の耐久性ではなく)を考えた場合、まず瓦は半永久的、本谷の谷板も当社の場合はステンレスを使用しているので、まず大丈夫、棟積みもモルタルの接着力に依存しない独自の耐震工法、そうなると残された課題は、瓦桟木の耐久性と、棟の土台となるモルタルの耐久性です。解体時に何度か確認したのですが、50〜60年前に施工した棟の土台モルタルも強度的に充分なまま現在に至ってます。そこで残るは瓦桟木です。
 腐らない桟木を使用するのが最良ですが、当社では防腐処理木材は基本的に使用しません。防腐処理薬剤の効果と安全性が懸念されるからです。防腐処理木材は薬剤を木に注入する場合もあるのですが、基本的に薬剤が注入されやすい木材とは腐食し易い木材に他なりません。腐食しにくい木材(ヒノキ、ヒバなど)はほとんど薬剤が浸透しません。将来、防腐処理木材が腐食し朽ちてしまったら、薬剤だけがそこに残ってしまうことになります。環境負荷を考えればやはり使用は控えたくなってしまいます。
 ならばヒノキを使えば良い、となりますが、残念ながら今のところヒノキやヒバは継続的な入手が困難なのです。
 そこで注目されるのが樹脂製の桟木です。ある大手ハウスメーカーでは数年前から標準仕様になっています。曲げ強度、圧縮強度では木材に劣りますが、瓦桟木として使用する場合は問題がないと思います。また、釘の引き抜き強度(引き抜き難さ)では、木材より上と感じます(データではなく実感です)。
 樹脂桟木は、木材より価格は高いですが、材料費全体に占める割合はそれほど多くありません。大雑把に言って当社が工事を行う平均的な屋根の大きさだと、2〜3万円ほど工事代を追加していただければ樹脂桟木にできます。
 今のところ、当社では桟木には杉材を使用し、棟際、谷際といった浸水の可能性が高い箇所のみ樹脂桟木を使用しております。
 最後の、桟木の水抜き穴(ウォーターホール)に触れておきます
 瓦の下に水が浸入した場合、または瓦の下で結露が発生した場合、流れ落ちようとする水が瓦桟木で遮られてしまい逃げ場がなくなってしまうと、ルーフィングを止め付けたステープルの穴や、桟木を止めている釘穴から屋根板の方へ浸入してしまう場合があります。  したがって、この水が桟木に遮られないよう、桟木の下部を適当な間隔で削り取って水の逃げ道を与えてやります。逃げた水はそのまま全体に薄く散らばって流れるか、最後は軒先に来て外部に吐き出されてしまいます。
 このような水抜き穴の付いた桟木も広く普及しています。また、普通の桟木を用いる場合は、屋根に事前に縦桟(キズリテープというものを使用します)を流しておき、その上に桟木を打ちます。縦桟がバックアップ材となり桟木を浮かせ水の逃げ道を作るという工法です。
 先に、F形の瓦は防水性能が劣ると書きましたが、F形の施工マニュアルはその発売当初から、この工法を工事店に義務化しておりました。屋根材の欠点を2次防水層で補うという考えです。

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7.本谷鉄板

 数年前まで、本谷には銅板を使用するのが、我々の地域では一般的でした。当社も0.4mm厚の銅板を使用していたのですが、2000年に社内で議論が持ち上がりました。「最近、緑青ののった銅板屋根を見かけない」「かつて緑青ののっていた銅板屋根から緑青が落ちてしまった」という話が発端です。
 結局、原因は酸性雨の影響と判断しました。銅板の耐久性は緑青の被膜があるからです。それが酸性雨の影響で流れてしまう、となれば、今後、本谷に銅板を使用することに疑問が生じます。
 それをきっかけに当社では2000年に、本谷板はステンレス(厚み0.35mm)を標準仕様とすることに切り替えました。

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8.緊結材(釘・ビス・銅線)

 この項は少し長くなると思います。ご了承ください。
 瓦の緊結材に求められる性能は

  • (1)耐候性(錆びない)
  • (2)保持力(引き抜け難い)
  • (3)止水性(水が伝わり難い)

といったところだと思います。
 この中でもっとも重要なのは(1)の耐候性です。
 瓦を止め付ける際、瓦に開いた釘穴に釘を差し込んで打ち込みますが、この釘が腐食してしまうと、釘穴の中で錆が太って内側から釘穴を圧迫し、その後、瓦にひびが入るか、ぱっくりと割れてしまうのです。
 したがって瓦の穴に差し込む釘、ビスは必ずステンレスを使用しなければなりません。ステンレスとひと口に言っても、磁性の有るもの(SUS410 等)と無いもの(SUS304、305等)があります。当然、磁性のないものの方が錆び難いです。当社では必ず磁性の無い釘、ビスを使用します。但し、強度は磁性の有るものに劣ります。事実、インパクト・ドライバで打ち込んだ時に、頭がちぎれやすいビスに遭遇したことがありました。同じステンレスといってもメーカーによって品質の差があるようなので、製品の選定には気を付けねばなりません。
 (2)の保持力が問題になるのは釘の場合です。ビスは一般に強い保持力が期待できます。
 釘の保持力を決定する大きな要素は釘の形状にあります。瓦工事に使用する代表的な釘の種類は、

  • ・スクリュー釘
  • ・スクリング釘
  • ・リング釘

といったところだと思います。
当社では、瓦の止め付けにはリング釘を使用しています。
いちばんの理由は他と比較し引き抜き強度が圧倒的に高いと実感出来たことです(実際に釘を打って引き抜いてみればすぐに分ります)。さらにもうひとつの大きな決め手は「止水性」です。リング釘の特徴は、釘の溝が釘を打ち込む方向に対して垂直に何重にも刻まれてます。この溝がいったん木材と噛んでしまえば、そこで水の浸入は阻まれると考えられます。他の釘は溝がらせん状に入ってますから、そのらせんを伝って浸水してゆく可能性があります。
また、2のスクリング釘は、名称の示す通りスクリューとリングの刻みを合わせたもので、一言で言ってギザギザしてます。屋根工事に使用する場合、このギザギザがルーフィングを必要以上に傷つけてしまう、と言われてます。特に実験をしたわけでなないのですが、理屈で考えればその可能性は高いと思われ、当社では使用しておりません。
(3)の止水性に話が及びましたが、ここで、2000年に瓦業界が発行した「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」(以下「ガイドライン」)についてお話しなければなりません。
2000年に建築基準法の大幅な改定があり(いわゆる住宅新法)、さらに「品確法」が制定されました。これらを受けて瓦業界も「ガイドライン」を発表したのですが、当社としてはこの内容の一部に大きな疑問を持っているのです。
このガイドラインでは、桟瓦を止め付ける際に65mmの長さの釘を使用せよ、と書いてあります。この長さの根拠は、「釘が瓦の釘穴に差し込まれて、瓦桟木を貫通し、さらに屋根板まで貫通する長さ」であることです。
確かに、止め付ける強度だけを考えた場合、「桟木だけに食い込んでいる」「若しくは桟木を付き抜け屋根板を突き抜ける手前で止まっている」長さに比べ、屋根板まで貫通する方が強いのは考えても分りますし、実際にデータもあります。しかし、実際にこのような工事を行った場合、小屋裏に入って屋根板の裏面を見上げれば、至る所から釘の先端が突き出ていることになります。 溜まった水は一度伝わるものを見つけた場合、その道がふさがるまでどこまでも伝っていきます。釘と釘穴は特に水が伝わり易いのです。それでもまだ釘の先に行き止まりがあれば(木材を突き抜けず中で留まっている状態)、水の流れはそこでストップします。しかし、釘の先がどこまでも貫通し、空間に突き出てしまい、そこを伝った水が、水滴となって落下するまでになってしまったら、水の流れは止まりません。
「ガイドライン」はこういった可能性を考慮していません。なぜなら「ガイドライン」は「風と地震に対してそれに対抗する施工法を示すもの」だからです。しかし、屋根にとってもっとも大切なことは、地震や台風で瓦が落ちたり飛んだりしないことも勿論ですが、一番は雨漏りさせないことです。
一般に建築の場合、あるひとつの性能を強化した場合、別の性能が低下したり思いがけない弊害が新たに生じることが往々にして起こります。その最大の失敗は、断熱を強化し、暖かい家を作ってみたら、たいへんな結露が発生し、家が腐ってしまった、という事例です(この時も断熱材をきちんと施工した真面目な工務店ほど被害を受けたと聞きました)。これが「不整合に気付かなかった失敗」の例です。
話を戻します。屋根の場合も、一般的に言って屋根材の緊結力を強化すればするほど、防水性能は落ちます。屋根材を緊結するということは取りも直さずやたらに釘止めすることですから、ルーフィングと屋根板にたくさん釘穴が開きます。穴が多ければ当然雨水の浸入箇所が多くなり、防水上は不利になります。
問題はそれだけではありません。屋根材の緊結力の強過ぎる屋根は、メンテナンスに支障を来たします。新築の場合は足場が組まれたところで仕事を行いますが、後日行われる点検・メンテナンスの際は足場がありません。瓦屋根に上がる場合、特に勾配(屋根の傾斜)が急な屋根の場合は、滑って転落せぬよう時には瓦を部分的に外しながら上って行きます。1枚置きにスクリュー釘で止めてあるくらいなら比較的楽に瓦を外せますが、防災機能付きの瓦をリング釘で全数止めした屋根の場合、1枚外すのにもたいへんな労力を要します。時には割らないと外せない場合もあります。さらに瓦を差し込んで元に戻すのも独特のコツが入ります。瓦の専門工事業者でなければこの作業は無理です。したがって部分的に破損した瓦を差換え修理するのも、以前と比べ格段の手間と危険を回避するための安全対策を要するようになりました。
今現在、当社がベストと考える緊結案は次の通りです。J形を例に説明いたします。但し、下記の下線部の工法は2006年8月時点では検討中であり、まだ実施しておりません。
当社の工事エリアは「基準風速30m/S地域」です。建設省告示で定められた基準風速9段階のうち、もっとも弱いレベルの地域です。 まず、瓦を止めるリング釘の長さは55mmを使用します。これは、J形の場合、15mm厚の桟木を貫通し、12m厚の屋根板を突き抜けずに納まる長さです。さらに瓦は防災機能付きとします。
2階建てまでの一般住宅の屋根瓦の場合、屋根の端部(軒、袖)は瓦1枚につき3箇所止め、棟際の瓦は全数止めとします。次に軒瓦から2枚目の瓦、および袖瓦の隣の瓦は全数止めします。また雪止瓦は原則2本止めとします。残りの瓦(平部の瓦と呼びます)は、その建物の立地条件・風向きで判断しますので一概には言えませんが、原則として1階は1枚置きの千鳥止めとします。2階は、45mmのリング釘を用意し、55mmと45mmの釘を交互に使いながら瓦を止めていきます。45mmの釘を使用するのは、この長さは桟木を突き抜ける直前で止まり、ルーフィングに傷をつけないぎりぎりの長さだからです。こうすることで、55mmの釘で全数止めを行った場合より、ルーフィングに開く釘穴を1/2近くまで減らせます。
当社も2003年5月の三陸南地震、2004年11月の強風と全国的に報道された大きな自然災害を体験しております。その時に把握した被害状況から、冷静かつ総合的(防水性、メンテナンス性も考慮して)に判断して、一般住宅における瓦の緊結方法の基準としては上記の方法で(当社の工事地域では)必要にして充分と考えます。
また、地震に関しては、独自に棟の耐震工法を確立しております。独自と言っても、普通に入手出来る材料だけで施工可能なオープンな工法です。本ホームページで耐震実験のVTRと施工図面も公開しておりますので、そちらも方もご参照ください。

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10.棟芯木

 現場レベルで、棟部に芯木を使用する工法が一般的になったのは比較的最近のことと思います。洋瓦のように、棟を高く積まない施工(丸瓦伏せとか冠納めと呼びます)で比較的早くに普及しました。工法の概略は、棟芯に910mm間隔程度で棟金具を取り付け、そこに40mm角前後の木材を棟芯にそって取り付けます。そこに丸瓦や冠瓦を被せて木材当てにビスを使用して止め付けるものです。平瓦と棟瓦の隙間は事前にモルタルなど湿式材料で埋めておきます。
 従来工法は、湿式材料と銅線だけで止めるものでしたから、芯木とビスを使った方法は、棟瓦の固定力を大幅に向上させました。  和瓦の場合、棟にのし瓦を数段積んで納めますが、「ガイドライン」では、この場合もやはり芯木を使う施工例を提示しております。しかし、実際の施工現場レベルでは、このような工法はまだまだ普及していないと思われます。
 当社の耐震棟工法は、「ガイドライン」の例示工法を、当社なりに改良したもので、芯木は樹脂製品を使用しております。
 寒冷地では、棟納め用の湿式材料はセメントモルタルを使用するのが一般的ですが、芯木はその中に埋め込むことになるので、長期的に見て腐食が心配されます。前述の通り、原則として当社では防腐処理薬剤の塗装品もしくは注入材は使用しないことにしております。したがって残る材質として樹脂製品を使用することになりました。
 棟施工法の詳細については「施工マニュアリング」を参照願います。

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11.湿式材料(セメント・砂・混和材)

 棟・壁際を納める時に使用します。平瓦の形状はF形を除いて山と谷がありますから、棟・壁際部は谷部分を埋めて平らにしないと、のし瓦や棟瓦を納めることができません。この「平らにする」工程を当社では「台面取り」と呼んでます。台面を取ることによって平瓦とのし瓦もしくは棟瓦との隙間が埋まり、かつ安定した納まりとなります。
 一般住宅の棟・壁際に使用する湿式材料は、大きく分けて、南蛮漆喰とセメントモルタルがあります。一般的には南蛮漆喰を使用し、寒冷地においては凍害を避ける配慮からセメントモルタルを使用する傾向があります。
当社の工事エリアである岩手県はまさに寒冷地であり、当社も含め県内の瓦工事店は筆者の知る限りではどこもセメントモルタルを使用しております。
工事現場に小型ミキサーを持ち込み、普通ポルトラントセメント、川砂、さらに瓦用の棟土として市販されている配合土を混ぜて、水を入れ、練って使用します。
このようなやり方をしているのは、東北でも一部の地域で、全国的に見れば少数派のようです。また、南蛮漆喰とセメントモルタルでは使用するコテも違いますし、扱う技能(コツ)も違います。普段南蛮漆喰を使っている職人はセメントモルタルを扱えませんし、その逆もあります。
以前は、南蛮漆喰でもセメントモルタルでも職人は現場にミキサーを持ち込んで練っておりました。しかし、袋の入った棟用配合土が発売されてから、一気にそちらに移行したようです。確かに現場でミキサー練りする必要がありませんので大幅な省力化になったのでしょう。
当社の考えとしては、やはり湿式材料は現場でその地域の気候にあった配合を行い、手間がかかってもミキサーで練り直すという工程を省くべきではない、と思います。
建築全般に言えることですが、新しいことを行った場合、その結果がすぐには出ません。棟土の配合は、特に気を使う分野です。当社も10年程前まで、棟土はセメントと川砂だけでしたが、棟用配合土を混ぜることで施工性と防水性が向上すると考え、配合比を変えて何種類か練った塊を1年間曝露試験を行い、耐候性・耐久性を確認した上で現在の配合を決定しました。

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12.棟換気

 瓦の棟換気部材は、

  • (1) 棟上部取付け型
  • (2) 棟部瓦下取付け型

とに分類されます。
 (1)は棟瓦に組み込むタイプの物で換気口は外部に面してます。(2)は棟際の平瓦の下に設置し、したがって換気口は外部から見えません。このタイプは平瓦の下も外気と見なす、という前提に立って考えられたものです。平瓦の下でどれだけ換気できるのだろう、と疑問が沸きますが、当社では、発炎筒を焚いて実証実験を行ってみました。結果を数値として表すことは出来ませんが、視覚的にみて充分換気を取れているという実感を得ました。本ホームページでも映像を公開しておりますのでご覧ください。
 データはありませんが、(2)の部材の方が広く普及している、と思われます。(1)に比べ価格が安いことと、換気口が外部に面してませんから、防水上安心感があるためと思います。当社も特に指定がなければ(2)のタイプを使用しております。
 以上が換気部材の紹介になります。次に、屋根換気には「小屋裏換気」と「屋根の垂木間換気」の2通りがあることをご説明いたします。
 「小屋裏換気」とは要するに天井裏にこもった空気を入れ替えることです。この前提となるのは、建物の天井部分で気密と断熱がしっかり成されていることです。つまり、天井までを室内(建物の内側)と捉え、そこから上(天井裏)は外部と見なす、という考えです。もちろん、天井での気密・断熱が成されていない建物の場合でも屋根換気を行うことは結露防止を考えれば有効かもしれませんが、一方、居室が暖まりにくくなる不便が生じます。暖まった空気がどんどん天井から外へ逃げて行き、暖まらないからさらに暖房を使うといったエネルギー効率の悪い暮らし方になります。
「屋根の垂木間換気」は、天井ではなく屋根を断熱層とした場合に使用されます。この場合は、天井裏は建物の内部と見なします。一般的に言って建物内部から外に向かい、気密層→断熱層→透湿防水層→通気層→屋根板の順で部材が重なります。「垂木間換気」とはこの通気層を通って上昇した空気を棟の頂点で排気することです。
したがって「小屋裏換気」と「垂木間換気」では、取り付ける換気部材の数量の算出の仕方も、取付け方も異なります。「小屋裏換気」の場合は天井面積が数量算出基準になり、「垂木間換気」の場合は、垂木で仕切られた個々の通気層の空気をいかに有効に吐き出させてやるかが数量算出のポイントになります。
何れの場合も、建物それ自体の気密・断熱がきちんと成されていることが前提となって棟換気が有効なものとなります。
「高気密・高断熱・計画換気」で設計された住宅は、少ないエネルギーで屋内全体を快適な室温で維持することを目的にしています。その結果として、建物の内部の熱が屋根面に伝わることがなくなり、北国の屋根を悩ませてきた「すがもれ(氷漏れ)」や、2階の屋根からの落雪・落氷による1階の瓦の破損という問題を解消しました。「すがもれ」等に関しては別項「屋根のトラブル」で再度説明いたします。

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